今、日本の貧困問題がクローズアップされています。特に母子家庭や父子家庭で子育て世代にあたる人の貧困問題が大変深刻であること、養育費の未払いや不払いが大変多い故に、生活保護を受給せざるを得ない状況に追い込まれるひとり親の家庭が多いということを聞いたことはないでしょうか?そんな中、先日興味深いニュースを拝見しました。内容は、養育費の未払いがあった場合、保証会社が1年間代わりに立替えてくれるというサービスがスタートしたということです。以下の報道内容を見てみましょう。

 

【養育費を受けている母子世帯の割合は2割強(父子世帯3%)に過ぎない!】

 

養育費支払いを保証 イントラスト、ひとり親家庭支援

離婚家庭の養育費、保証します――。総合保証会社のイントラストは離婚が決まった子持ちの夫婦を対象に、養育費の支払いを保証するサービスを月内に始める。離婚時に契約すれば、養育費の支払いが何らかの理由で止まった場合、イントラストが約1年間、養育費を立て替えるとともに、支払い義務を負う親に立て替え分を請求する。

 

契約料は最初の1年は養育費の約1カ月分。1年ごとに契約を更新する。契約料の支払いをどちらの親にするかは離婚協議の際に話し合いで決める。離婚家庭では養育費の支払いが滞るケースが多く、ひとり親の家庭が経済面で苦労しない環境を整える。 離婚問題に詳しい弁護士と協力し、新サービスを売り込む。2018年度は250件程度、1000万円の売り上げを見込む。

 

厚生労働省の16年度の「全国ひとり親世帯等調査報告」によると、現在も養育費を受けていると答えた母子世帯の割合は2割強、父子世帯は3%にとどまった。1世帯の養育費は平均月額で3万~4万円台だ。

 

離婚時に養育費の支払いを取り決めていても、相手からの養育費支払いが途絶える例が多い。子育てをしながら支払いを求めて裁判を起こすのも費用や時間がかかるため、泣き寝入りする人が少なくないのが実情だ。

出典:日本経済新聞2018/2/10 12:30

 

ここの記事にあるように、実は養育費そのものは、普通の企業や個人における借金の取立てと同じで、証拠があれば、裁判所にそれを持込んで、裁判を起こすなり、差押えをしたりすることは不可能ではない。

 

しかし、である。世の中で(企業の法務担当や弁護士のような特殊な職業でもない限り)普通に暮らしている人が、契約条件の細かい取決めやら、弁護士との折衝(当然お金がかかる)や、裁判に馴染みがあるだろうか?恐らく普通の人はそこで尻込みしてしまうはずである。知りもしない弁護士の所に、電話をかけて、相談して、難しそうな書類、金額のことetc…ただでさえ憔悴しきっている所に、そんな面倒なことをしたいと思うはずがない。そもそも公正証書って何よ?というのが普通の人の感覚だろう。

 

勿論、経済的事情で支払うことが出来ない人もいるだろうが、意図的に支払わない人もかなりいるはずである。何故なら、上述したようにそもそも、民事執行手続きというものに疎いのが普通だと思われるし、そもそも日本全体が”なあなあ主義”であって、欧米社会の根底にあるような、ものごとをきっちりと決める契約社会でないからである。

 

 

だからこそ、(これが悪循環なのであるが)離婚の前に離婚協議書や公正証書を作る等して、しっかりと準備して離婚をする必要があるのに、実際はそうした取決めや書類作成をすることもなく、子供を連れて奥さんが(旦那の場合もあるだろう)家を出て行くようなパターンに陥ってしまう人が多い。そうなると、ただでさえ、不足いているとされる日本の子育てに関連する公的な福祉に加え、社会的弱者であれば当然給料も低くくなると想定され、結果として、養育費の不払い:否、不払いならまだましな方で、例えばDVにあって精神的に動揺しているような状況下で、そんなことも頭にも思い浮かばない状況下での離婚であれば、「そもそも(契約も取決もないのだから)養育費を受取る権利自体が存在しない」という人が多いだろう。

 

【海外では養育費の不払いに対して厳しい:場合によっては刑務所行きである】

 

それでは、海外の事例を見て見よう。

 

アメリカの養育費の支払わせ方は徹底している

 

養育費支払確保の ための意見書 – 日本弁護士連合会

 

まとめると、

 

・米国では源泉徴収する仕組があって、養育費不払いだと社会的信用が毀損され、就職にも差し支える、強制的に拘禁される可能性もある。

・欧州では国が立替払いする制度がある。当然立替えた分は、その本来養育費を払う義務者の所に請求が行く。

 

 

【理由:恐らく政治家にとっても官僚にとっても利権があまり絡まないからだろう】

 

そして、恐らく、こうなった原因は極めてシンプルで、(権力や制度を握る有力者は)誰も真剣に考えてこなかったからである。これは民事のことだから、離婚当事者同士でやってくれというなあなあ主義もさることながら、政治家にとっても官僚にとっても、利権めいたものがあまり動きそうもない案件であることも原因ではないだろうか?

 

防衛問題、公共事業、児童手当etc…そうした分かり易いキーワードの方が多くの人にとってもピンと来るので、大きな政治的な争点にならなかったからだろう。実際に本ブログで貼付したように、日弁連が意見書を2004年の時点(何と14年前!)で既に出していたという事実すら知らない人が殆どだろう。(勿論、日本が長く高度経済成長と、専業主婦を支えるだけの昇給があり、退職金が出るという時代が長く続いた影響もあると思われる。)

 

【結論:民間の知恵+国の制度面での対応が求められる】

 

しかし、である。今日本は明らかに低成長時代を迎えている。少子高齢化の結果として、年金の破綻の可能性、生活保護の受給と医療費の増加も深刻な問題となっている。(つまり、養育費の不払いがこれまであまり大きく取上げられなかった原因の一つが、「最後は生活保護に頼ればいい」、という前提は確かにあったからではないだろうか?)

 

上記の記事に挙げた、民間保証会社による保証の他、離婚協議書や公正証書といった難しいやり取りを必要とする事項については、国が制度として立替払いや、源泉徴収や差押え等を行うことが出来るようにサポートするべきであり、そうした仕組を一刻も早く作るべきである。それが結果として、多くの養育費不払いによる生活の困窮に悩む母子家庭、父子家庭(そして何よりも子供達!)を救うだけでなく、(国が本来なら負担しなくてもよいはずの)生活保護費の減少にもつながるのだから。

 

【参考資料】

以下に養育費保証に関する一般ユーザー向けのページがあります。必要に応じて確認してみるとよいでしょう。

養育費保証サービス「チャイルドサポート」のWEBページ

 

 

 

 

 

 

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